教えてQ & A ~アメリカ医療現場から~ 前篇

日本とアメリカの医療現場の違いについて代表の星宣子(ほし のりこ)がお答えします。

Q:

日本では、入院・退院・薬が変わったタイミングで、薬剤師が患者さんに説明しますが、アメリカの一般的な総合病院では、薬や食事の内容について、誰がどのタイミングで説明するのでしょうか。

A:

役割担当は日本とほぼ同じです。まずIDT (Interdisciplinary Team=患者を医療的にケアする専門家達)が患者にアプローチし、看護師が主に医師の指示に沿って、薬を与えます。一方で医師も看護師や薬剤師、栄養士の勧めに応じて、適切な投薬や食事を患者に与えます。日本と比べて、医師が患者と接する時間は少なく、医師から薬剤師や栄養士に連絡がいかない限り、個別での指導は行うことはありません。在院日数が極端に少ないので、入院から退院までの指導や説明は、正看護師(RN-Registered Nurse)が行っていることが多いです。

また新しい薬を使う時は、薬剤師が患者のもとを訪れ説明します。薬の変更時は、医師または薬剤師が説明するよう薬事法で決められているからです。

そして食事は、一般的に入院時とメニューが変わった時点で、栄養士が患者に説明しますが、日本よりも患者が選べる食事の種類が多いので、必ずしも栄養士が説明するとは限りません。患者が選んだメニューに対して、多すぎる物は抜き、足りない場合は追加するなどのアセスメントを行います。

Q:

日本では、点滴を取り替える際にマスクと手袋を着けて行っていますが、アメリカではどうですか?着けている場合と着けていない場合の理由はありますか?

A:

基本的にアメリカでは、マスクや手袋が必要であると判断した状況に応じて、着けることが要求されます。

マスクは、感染性呼吸器疾患(Respiratory Infectious Disease)を持つ患者でない限り着けません。しかしながら、ICU患者、免疫機能疾患患者を守るために必要な場合や 、医療者側に問題がある場合など、特異な状況のみ使用しています。つまりアメリカでは、マスクを着けるという行為は、スタッフが感染源を持っている印象を与える可能性があるのです。

一方で、手袋の着用は、安全と感染管理の上で必須になっているため、点滴の場合も担当者は手袋を着けます。

ですから感染予防としてのマスクと手袋着用は、日本と同じと言えるでしょう。

Q:

日本では患者の体を拭く際、温かいおしぼりで拭きますが、アメリカではどうですか?

A:

近年では、使い捨てのタオルなどの使用が目立ちます。老人ホームでは、日本と同様に准看護助手(Certified Nursing Assistant)が担当し、ベッドから起き上がれずシャワーを浴びることができない患者には、ぬるま湯と石鹸で清拭し、その後にタオルで身体を拭きます。

医療施設によって、コストとケアの考え方が異なり、日本のような手厚い清拭を行う 施設は少ないと思います。私の経験上でも、実習先で見たことがありません。 これはお風呂に浸かる文化がないことや、気候、医療システムの違いなどが影響しているように感じます。

保温性の高い使い捨てのウエットティッシュ(大判)で簡易に済ませる場合や、 容器にボディソープを混ぜたぬるめのお湯を張り、タオルで清拭を行うところもありました。 基本的に看護師は清拭を行わないため、清拭の基本例は記載されているものの、トレーニングは受けていませんし、スタッフによって異なるというのが大きな違いなのではないでしょうか。 また基本的にRNは清拭はしません。

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